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著作権
 著作権というのは、簡単にいうと、小説を書いたり、楽曲を作曲したりしたときに、それらを出版したり、放送したりして、利用することについて、それらを書いた人、作曲した人に、法律によって認められる権利です。小説や楽曲のような著作権による保護の対象となるものを著作物といい、それらを創作した人を著作者といいます。著作権法は、著作者はこの権利を占有すると規定して著作者が独占する権利であることを明らかにしています。ただし、著作者が自分自身でその著作物を利用することは稀でしょうから著作権とは、他人が著作物を利用することについて許諾する権利であるともいえます。


使用許諾
 例えば、諸外国ごとに南洋諸国や東南アジアの珍しい美しい郵便切手を複写拡大してカレンダーの図柄として使用したいといった場合、まず、著作権の使用許諾を求める交渉の相手方がどこになるのかを調査する必要があります。郵便切手は、国が画家や写真家などに依頼して作らせた図柄を使用しているケースが多くあります。この場合、外国の著作権を保護するといっても、その外国と日本が相互に著作権を保護する条約に加盟している場合に限ります。条約に加盟している国の場合、調査や交渉を省く便法として、日本駐在の外国大使館へ行き、相談してみることです。国によっては郵便切手の図柄は政府刊行物として著作権の保護から外しているところもあるからです。また、複写する際には郵便切手とは考えられない規格の大きさに複写しておき、切手図柄を切り抜き、郵便物に使用する人がいないようにするなど、紛らわしい外観を有するものにならないように注意するなどの対応が必要となります。


著作権侵害の対応策
 例えば、A社がイラストレーターに依頼して作成したイラストをクライアントB社の販促用パンフレットに使用し、好評になりました。ところが、その後、このイラスト及び販促に使用したコピー、字体までそっくりそのまま拡大して使用した風俗営業C店の大きな看板であるのを発見したとします。勿論、無断使用であるといった場合、どういった対応策を取ることができるか。
 まず、イラストを無断で使用した相手がC店の誰であるか、先程の郵便切手の例と同じように確認を取る必要があります。風俗営業は許可制ですから、弁護士会を通じて、その営業所の所在地の都道府県公安委員会に照会して、営業主が誰であるかを確認する必要があります。
 では、相手を訴えるのは誰になるのかという事が論点になってきます。それは著作権者が誰であるかという事で判断されます。この場合、イラストレーターが特に著作権譲渡契約を結ばない限り、著作権はイラストレーターにあります。A社はイラストレーターとクライアントであるB社との間にあり、著作物(イラスト原画)を販促物(パンフレット)という形に複製し、それをクライアントB社に提供することを契約上担当したもので、このような形の著作権侵害を排除する権利も義務もありません。
次にクライアントも販促物(パンフレット)を受け取って、それを販売促進に使う権利はありますが、その限りで著作権を使用できるに過ぎないので、このような第三者の著作権侵害を排除する権利も義務もありません。
 そうすると、イラストレーターが相手を訴えなければなりませんが、イラストレーターが個人で依頼を請け負っている場合などには訴える経済力などがありません。そういった時にはA社がイラストレーターから著作権を譲り受けて、著作権者として行動する以外にないでしょう。
 まず、内容証明郵便で、何日以内にその看板を撤去するよう要求し、もし撤去しなければ法的手続に訴える旨を警告します。それでも撤去しない場合は刑事手続きとして、著作権侵害者の処罰を求めて警察署又は地方検察庁に告訴します。このような著作権侵害者には三年以下の懲役又は一〇〇万円以下の罰金が課せられます。民事手続きとしては、地方裁判所で本裁判前に早急に看板を撤去することを命令してもらう仮処分手続き、看板の撤去と損害賠償を求める本裁判の手続きを行います。
 こういったように著作権侵害の対応策は誰が著作権者であるかを確認したうえで、侵害者に訴求する必要があります。


肖像権
 肖像権は日本において、法律で明文化されてはいません。但し、日本の判例において、認められるケースがあります。肖像権における初の判例とされているのは、1962年に起きた京都大学管理法反対デモ事件であります。警察官が違法な行進の状態および違反者の確認のため、歩道上から被告人を含むデモ隊の先頭部分の行進状況を写真撮影しました。承諾なしにみだりに容貌等を撮影されない自由、いわゆる肖像権が憲法上保障されるかどうかであります。これに対し、最高裁判決(1969年12月24日)は、『憲法一三条は、「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」と規定しているのであって、これは、国民の私生活上の自由が、警察権等の国家権力の行使に対しても保護されるべきことを規定しているものということができる』とした上で、『個人の私生活上の自由の一つとして、何人も、その承諾なしに、みだりにその容ぼう・姿態(以下「容ぼう等」という。)を撮影されない自由を有するものというべきである。これを肖像権と称するかどうかは別として、少なくとも、警察官が、正当な理由もないのに、個人の容ぼう等を撮影することは、憲法一三条の趣旨に反し、許されないものといわなければならない』と判示しています。但し、現行犯の場合で証拠保全の必要性、緊急性があり、相当な方法による撮影であるときは適法であるとしています。また、身体の拘束を受けている被疑者の写真撮影は、刑事訴訟法第218条2項で認められるとしています。
 昨今においては、著名な人物の肖像権についてばかりが報道されていますが、このように、著名であるかに関わらず、憲法は国家と市民の社 会契約であり、保護されるべきであるといえるでしょう。
 また、写真に限らず、似顔絵などでも写真に近い正確なものであれば、肖像権があると考えるべきでしょう。例えば、企業が有名な外国の俳優の似顔絵を使って、カレンダーの図柄として、商品宣伝する際の肖像権における問題を指摘するとしてみます。似顔絵であっても、写真に近い正確なものは写真と同等と考えるべきであり、この場合、肖像権を侵害する恐れがあります。これを防ぐために、顔の輪郭を描かずに、目、鼻、口だけの特徴を抽出したものにしてみるのであれば、侵害したことにはならず、問題はないです。